State of Solana DePIN 2024

レポートの目的と概要

本レポートは、急速に成長しているDePIN市場と、その中でもSolanaチェーンが果たす役割について探究することを目的としています。また、この新興市場における日本企業の参入可能性と戦略についても考察します。
DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network)は、ブロックチェーン技術を活用して物理的なインフラストラクチャを分散化し、より効率的で透明性の高いシステムを構築する革新的な概念です。この技術は、通信、コンピューティング、センサーネットワーク、モビリティ、エネルギーなど、さまざまな分野に応用されつつあります。
Solanaは、高性能で低コストなブロックチェーンとして知られており、DePINプロジェクトにとって理想的な基盤となっています。その高いスループット、低いガス料金、堅牢なトークン標準、活発な開発者コミュニティなどの特徴が、DePINプロジェクトの要求を満たし、急速な成長を支えています。
本レポートでは、まずDePINの概念と現状について詳しく解説し、市場規模や成長予測、主要なセグメントとその事例を紹介します。次に、Solanaの特徴とDePINとの親和性について分析し、Solana上で展開される主要なDePINプロジェクトを紹介します。さらに、日本企業にとってのDePIN市場参入の機会について考察します。日本の高度な技術力、品質管理、そして信頼性の高いインフラ構築の経験は、DePIN市場で大きな強みとなる可能性があります。
DePIN市場は急速に発展しており、2028年までに3.5兆ドル規模に達すると予測されています。この成長市場において、Solanaは「DePINチェーン」としての地位を確立しつつあります。日本企業がこの市場で成功を収めるためには、技術理解の深化、そして自社の強みを活かしたユニークな価値提案が不可欠となるでしょう。本レポートが、日本企業のDePIN市場参入を検討する上での有益な指針となり、新たなビジネスチャンスの創出につながることを期待しています。

DePINの概要

2.1 DePINの特徴と定義

DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network)は、ブロックチェーン技術を活用して物理的なインフラストラクチャを分散化し、より効率的で透明性の高いシステムを構築する革新的な概念です。この革新的な概念は、従来の中央集権的なインフラストラクチャモデルに代わる、より効率的で透明性の高いシステムを目指しています。
DePINの主な特徴は以下の通りです:
分散型のネットワーク構造:単一の中央管理者ではなく、多数の参加者によって運営されます。これにより、システムの耐障害性が向上し、単一障害点のリスクが軽減されます。
トークンによるインセンティブメカニズム:ネットワーク参加者に対して、貢献度に応じたトークン報酬を提供します。これにより、参加者のモチベーションを高め、ネットワークの成長と維持を促進します。
物理的資源とデジタル技術の融合:実世界の物理的資源とブロックチェーン技術を統合します。この融合により、従来のインフラストラクチャの効率性と透明性が向上します。
データの有効活用:収集されたデータの保存、送信、共有、利用に焦点を当てたビジネスモデルを採用しています。これにより、データの価値を最大化し、新たなサービスや洞察を生み出す機会を創出します。
透明性と検証可能性:ブロックチェーン技術により、ネットワークの動作や取引が透明で検証可能です。これにより、参加者間の信頼性が向上し、不正行為のリスクが低減されます。
DePINプロジェクトの構成要素は以下の通りです:
「ハードウェア」「ネットワーク貢献者」「利用者」の3つを組み合わせ、「インセンティブメカニズム」を構築することで、DePINが機能します。
リソース:プロジェクトが提供する特定のリソース(例:ストレージ容量、コンピューティングパワー)。これは、プロジェクトの主要な価値提案であり、ユーザーが利用する具体的なサービスを定義します。
ハードウェア:ネットワーク貢献者が使用する機器。これらのデバイスは、プロジェクトの価値の源泉であるリソース(例:ストレージ容量、コンピューティングパワー)を生成または提供するために必要不可欠です。例えば、Wi-Fiルーター、GPUユニット、センサーなどが含まれます。
インセンティブメカニズム:トークンを付与するシステム。これは、ネットワーク参加者の貢献を報酬として認識し、継続的な参加を促すための重要な要素です。通常、プロジェクト固有のトークンが使用されます。
ネットワーク貢献者:リソースを提供する個人や団体。これらの参加者は、自身のハードウェアやリソースをネットワークに提供することで、プロジェクトの基盤を形成します。
利用者消費者:サービスを利用するエンドユーザー。これらのユーザーは、プロジェクトが提供するリソースやサービスを利用し、その対価としてトークンを支払います。
これらの特徴と構成要素が組み合わさることで、DePINプロジェクトは従来の中央集権型インフラストラクチャとは異なる、より効率的で民主的なシステムを構築することができます。参加者全員がネットワークの価値創造に貢献し、その恩恵を受けることができる仕組みとなっています。

2.2 DePINの現状と市場規模

DePIN市場は急速に成長しており、2024年4月のUWEBとJDI Globalの報告(参考)によると、2028年までに3.5兆ドルに達すると予測されています。2023年末時点でDePINセクターの時価総額は約400億ドルでしたが、2024年3月には過去最高の800億ドルまで急増しました。
この急速な成長は、ブロックチェーン技術の進化、IoTデバイスの普及、そしてより効率的でユーザー中心のインフラストラクチャへの需要増加によって推進されています。

2.3 セグメント別DePIN事例

DePINは主に物理的資源ネットワークとデジタル資源ネットワークの2つのグループに分類することができます:
物理的資源ネットワーク:これらのネットワークは、特定の場所に設置されたデバイスを活用し、その地理的特性を活かしたユニークで再現不可能なサービスを提供することにインセンティブを与えます。例えば、無線通信のカバレッジ、局所的な環境データ、特定地点の画像などが挙げられます。これらのネットワークで使用されるハードウェアは、多くの場合一般利用者消費者向けの製品や一般小売店で入手可能な機器であるため、幅広い層の参加者がネットワークに容易に参加できるという特徴があります。
物理的資源ネットワークはさらに、デバイスの要件に基づいて、主に2つのアプローチに分類されます:
特定用途専用デバイス方式:このアプローチでは、デバイスは特定の用途や応用分野のために専門的に設計されます。これらの機器は、その特定の用途の要求に正確に合わせて調整されており、最適な性能と機能を実現します。この方法の大きな利点は、特定の業界にとって極めて重要な、高度に専門化されたデータを提供できることです。
汎用デバイス方式:特定用途専用デバイス方式とは対照的に、汎用デバイス方式はより開放的なフレームワークを採用しています。一定の互換性基準を満たせば、様々な種類のセンサーやデバイスをネットワークに接続することができます。この包括的なアプローチにより、より幅広い参加者の募集や多様なセンサーの活用が促進されます。
デジタル資源ネットワーク:これらのネットワークでは、参加者が自身の未使用のデジタルリソース(帯域幅、ストレージ容量、計算能力など)を提供します。これらの分散化されたリソースは、従来のクラウドサービスプロバイダーと比較して、コストと利用のしやすさの面で競争力を持つ商品化可能な資源となります。このアプローチにより、既存のクラウドサービス市場に対して、より柔軟で効率的な選択肢を提供することが可能になります。

2.3.1 物理的資源ネットワーク事例

2.3.1.1 センサーネットワーク

2.3.1.1.1 モビリティ

モビリティセンサーは、物体や人の移動、輸送に関するデータを監視・提供するために設計されています。これらのセンサーは、追跡、ナビゲーション、物流が重要なアプリケーションにおいて極めて重要な役割を果たします。分散型アプローチにより、データの所有権をユーザーに還元し、プライバシーを強化しつつ、より広範囲で詳細なデータ収集が可能になります。また、トークンインセンティブにより、ユーザーの積極的な参加を促進し、データの質と量を向上させることができます。従来の中央集権型システムと比較して、より動的で実時間性の高いモビリティデータを低コストで収集できます。
プロジェクト事例:
DIMO (Polygon)
DIMOは車両データのオープンプロトコルを提供し、ユーザーがデータを管理・収益化できるプラットフォームです。ブロックチェーンを活用して車両のデジタルアイデンティティを確立し、開発者が新しいモビリティアプリを構築できる環境を提供します。
Drlife (SUI)
DRIFEは分散型のライドシェアプラットフォームで、ゼロコミッションモデルを採用しています。ブロックチェーン技術を活用して取引の透明性を確保し、ドライバーと乗客の双方に公平な価格設定を提供しています。インドと中東を中心に展開し、従来のライドシェアサービスの課題解決を目指しています。

2.3.1.1.2 マッピング

マッピングセンサーは、地理的・地形的データを取得し、詳細な地図や空間モデルの作成を可能にします。これらのセンサーは、空間分析、都市計画、環境モニタリングなどの分野で広く活用されています。中央集権的な地図サービスに比べ、リアルタイムの更新と高い精度を低コストで実現できます。また、地域コミュニティの参加により、ローカルな詳細情報を含む豊富なデータを収集することが可能になります。さらに、データの民主化により、新たな位置情報ベースのサービスやアプリケーションの開発が促進されます。
プロジェクト事例:
Hivemapper (Solana)
分散型の地図作成プラットフォームで、ユーザーが運転中にダッシュカムで道路データを収集し、暗号通貨を獲得できます。常に最新の地図データを維持することを目指しています。
Natix (Solana)
Natixは、スマートフォンのやカメラを活用した分散型マッピングネットワークを構築するプロジェクトです。AIを搭載したダッシュカムアプリ「Drive&」を通じて、ユーザーが運転中にデータを収集し、報酬を得ることができます。ユーザーはスマートフォンをセットするだけよいため、物理的な制限がありません。また、収集されたデータはプライバシーを保護しつつ、スマートシティや移動性アプリケーションのための動的マップ作成に活用されます。
Natixの優れているところは、匿名性を担保した状態で地理空間データを送信し、地図を作ることができる点です。欧州発ということもあり、匿名性を重視しています。これを実現しているのは、Natixが実装しているAIとメタデータ(建物や車両がどのくらい離れているかの距離や識別情報など)を組み合わせて実現しています。

2.3.1.1.3 位置

位置センサーは、物体やデバイスの正確な地理的座標を決定します。これらのセンサーは、ナビゲーション、資産追跡、位置ベースのサービスなど、正確な位置情報が重要な様々なアプリケーションに不可欠です。従来のGPSシステムよりも高精度な位置情報を提供し、かつ分散型のアプローチにより、システムの耐障害性と可用性を向上させることができます。また、プライバシーを考慮した位置情報の共有が可能になり、ユーザーが自身のデータをより細かく制御できるようになります。
プロジェクト事例:
GEODNET (Polygon)
GEODNETは、Web3.0ブロックチェーンベースのRTK(Real-Time Kinematics)ネットワークを構築するプロジェクトです。参加者が屋根にRTK基準局(Satellite Miner)を設置することで、高精度な位置情報サービスを提供し、トークンを獲得できます。自動運転、ドローン、精密農業など、様々な分野での応用を目指しています。
Onocoy (Solana)
コミュニティ主導のGNSS基準局ネットワークを構築し、高精度な位置情報サービスを提供するプロジェクトです。自動運転車や精密農業などの新技術の発展を支援することを目指しています。

2.3.1.1.4 エネルギー

エネルギーセンサーは、エネルギーの消費と分配を監視し、最適化するために使用されます。これらのセンサーは、持続可能性の向上と資源効率の最適化において重要な役割を果たします。分散型のエネルギー管理システムにより、よりきめ細かいエネルギー最適化が可能になります。また、P2Pエネルギー取引などの新しいビジネスモデルを実現し、エネルギー市場の効率化と民主化を促進します。さらに、再生可能エネルギーの統合やマイクログリッドの構築が容易になり、エネルギーシステムの柔軟性と耐障害性が向上します。
プロジェクト事例:
Daylight (IoTeX)
Daylight Energyは、家庭のエネルギーアップグレードを簡素化するプラットフォームです。ユーザーに合わせたエネルギー製品の設計と推奨、地元の認定業者とのマッチングを行い、クリーンエネルギーへの移行をサポートします。アプリを通じて家庭のエネルギー使用状況を管理し、リアルタイムの洞察を提供します。
M3tering (IoTeX)
M3teringプロトコルの中核は、クリーンエネルギーの導入を促進し、安価で持続可能な電力ソリューションのための電力取引をトークン化することです。

2.3.1.1.5 環境


環境センサーは、大気質、気象条件、水質、生態系の健全性など、環境の様々な側面を監視するために使用されます。これらのセンサーは、環境保護、気候変動対策、公衆衛生などの分野で重要な役割を果たします。広範囲にわたる詳細な環境データの収集が可能になり、より精密な環境モニタリングと予測が実現します。また、データの透明性と信頼性が向上し、環境政策の立案や実施に貢献します。市民科学の促進により、環境意識の向上と地域コミュニティの参加を促進できます。
プロジェクト事例:
WeatherXM (Arbitrum・Polygon)
分散型の気象ステーションネットワークを構築し、高精度な気象データを収集・提供するプロジェクトです。参加者は気象ステーションを設置してデータを提供し、トークンを獲得できます。
Planet Watch (Algorand)
環境データ収集のための分散型ネットワークを構築するプロジェクトです。参加者は大気質センサーを設置してデータを提供し、トークンを獲得できます。

2.3.1.1.6 パーソナル・ウェルネス


パーソナル・ウェルネスセンサーは、個人の健康と幸福を追跡・監視し、健康管理のための貴重なデータを提供するウェアラブルまたはポータブルデバイスです。これらのセンサーは、予防医療や個別化された健康管理に革命をもたらす可能性があります。個人の健康データの所有権と管理権をユーザーに与え、プライバシーを保護しつつ、必要に応じてデータを共有・活用できる柔軟なシステムを構築できます。また、データ提供に対する報酬により、継続的な健康モニタリングを促進します。さらに、匿名化されたデータの集約により、公衆衛生の研究や政策立案に貢献することができます。
プロジェクト事例:
Sweat (Near)
フィットネスアプリで、ユーザーの身体活動に応じてトークンを獲得できるプラットフォームです。歩数や運動量に基づいて暗号通貨を報酬として提供しています。
Healthblock (IoTeX)
HealthBlocksは、個人の健康データを活用して個人および集団の健康を改善するプラットフォームです。ユーザーは健康データを追跡・管理し、チャレンジに参加してリワードを獲得できます。また、研究者やビジネスパートナーに対して、プライバシーを保護しつつ健康データの分析や活用の機会を提供しています。

2.3.1.1.7 スマートホーム


スマートホームセンサーは、居住空間の利便性、セキュリティ、エネルギー効率を高めるために住宅環境に統合されます。これらのセンサーは、家庭生活の質を向上させるとともに、エネルギー消費の最適化にも貢献します。住宅所有者がデータの管理と活用を直接行うことができ、プライバシーとセキュリティを強化しつつ、より効率的な家庭管理を実現します。また、近隣世帯間でのデータ共有や協力が容易になり、コミュニティ全体の最適化が可能になります。さらに、スマートホームデバイス間の相互運用性が向上し、より統合されたホームオートメーションシステムの構築が可能になります。
プロジェクト事例:
Envirobloq (IoTeX)
EnviroBLOQは、家庭の環境モニタリングと維持管理を支援するIoTプラットフォームです。VOC、カビ、空気質などの潜在的な健康ハザードを警告し、HVAC、換気、配管などの非効率な領域を特定します。ユーザーはPebbleマイナーを通じてIoTXトークンを獲得できます。
PiPhi (Algorand)
PiPhiは、Algorandブロックチェーン上に構築されたスマートホームと環境データのためのプラットフォームです。シームレスな可視化とスマートホーム統合を提供し、ユーザーはPNTトークンを獲得しながらエコシステムの構築、統合、開発に参加できます。スマートホームセンサー、SDRサポート、簡素化されたトークノミクスを通じて、便利さ、持続可能性、快適性を向上させながら、エネルギーコストの削減を推進しています。

2.3.1.1.8 スマートシティ


スマートシティセンサーは、都市生活の様々な側面に関するデータを収集し、効率的な都市計画と管理を可能にするために都市環境に配備されています。これらのセンサーは、交通流の最適化、エネルギー管理、公共サービスの改善などに貢献します。市民参加型のデータ収集により、より包括的で詳細な都市データを低コストで収集できます。また、データの透明性と市民のプライバシー保護を両立させつつ、効率的な都市運営を実現します。さらに、オープンデータ政策との親和性が高く、革新的な都市サービスやアプリケーションの開発を促進します。
プロジェクト事例:
Elumicate (IoTeX)
Elumicateは、グローバルな統合スマートビジョンネットワークを構築するプロジェクトです。分散型のカメラネットワークを活用して、都市インフラの管理、環境モニタリング、緊急警報システムの強化など、様々な社会課題の解決を目指しています。ユーザーはカメラを追加してネットワークに貢献することで、トークン報酬を獲得できるコミュニティ主導型のエコシステムを構築しています。

2.3.1.1.9 サプライチェーン


サプライチェーンセンサーは、輸送や物流作業中の商品や資産の位置や状態を追跡するために使用されます。これらのセンサーは、効率的な在庫管理、品質保証、リアルタイムの追跡を可能にします。ブロックチェーン技術との組み合わせにより、サプライチェーン全体の透明性と追跡可能性が大幅に向上します。また、参加者間の信頼性が高まり、効率的な情報共有と迅速な問題解決が可能になります。さらに、スマートコントラクトを活用することで、自動化された取引や品質保証プロセスを実現できます。
プロジェクト事例:
OriginTrail (Ethereum・Gnosis・Polygon)
サプライチェーンの透明性と信頼性を向上させるための分散型プロトコルです。製品の追跡や認証を可能にし、ブロックチェーン技術を活用してデータの信頼性を確保しています。
Axis (Ethereum)
Axisは、物流業界向けのブロックチェーンベースのプラットフォームです。荷物追跡、直接接続、情報サービスなどの機能を提供し、これらのサービスはAXISトークンで支払われます。また、分散型貸付、荷物マッチング、保険市場などの新しいサービスも計画しています。

2.3.1.2 ワイヤレスネットワーク


2.3.1.2.1 5G


5Gネットワークは高速データ伝送と低遅延を提供するため、拡張現実、自動運転車、超高解像度ビデオストリーミングなどの先端的なアプリケーションに最適です。これらのネットワークは、次世代のデジタルインフラストラクチャの基盤となります。従来の通信事業者主導のモデルに比べ、より広範囲で低コストの5Gカバレッジを実現できます。また、コミュニティ主導の展開により、ローカルニーズに応じた柔軟なネットワーク構築が可能になります。さらに、ネットワークリソースの動的な割り当てと最適化が可能になり、全体的な効率性が向上します。
プロジェクト事例:
Helium Mobile (Solana)
分散型の5Gネットワークを構築するプロジェクトです。個人や企業がホットスポットを設置してネットワークに貢献し、トークンを獲得できます。
Karrier One (Polygon)
Karrier Oneは、通信とWeb3を統合した分散型ネットワークを構築するプロジェクトです。モバイル通信、仮想電話番号システム(KNS)、DAOガバナンスを提供し、世界中のどこでも接続性を確保することを目指しています。ユーザーはトークンを保有することでネットワークの意思決定に参加できます。

2.3.1.2.2 Wi-Fi


Wi-Fiネットワークは、ローカルのワイヤレス接続を提供し、多くの場合、家庭、企業、公共スペースでインターネットアクセスを提供します。また、特定のエリア内のデバイスを相互接続するためにも使用されます。個人や小規模事業者がWi-Fiホットスポットを提供することで、より広範囲で密なネットワークカバレッジを実現できます。また、トークンによる報酬システムにより、Wi-Fi共有の動機付けとなり、公共のインターネットアクセスを拡大します。さらに、セキュアで匿名性の高いWi-Fi接続オプションを提供することが可能になります。
プロジェクト事例:
Wicrypt (Polygon)
分散型のWi-Fiシェアリングネットワークです。ユーザーが自身のWi-Fiをシェアし、利用者から直接支払いを受け取ることができるプラットフォームです。
WiFiMap (Polygon)
グローバルなWi-Fiホットスポットマップを提供するコミュニティ主導のプラットフォームです。ユーザーがWi-Fi情報を共有し、世界中のフリーWi-Fiにアクセスできます。

2.3.1.2.3 Bluetooth


Bluetoothは、ワイヤレスヘッドフォン、スピーカー、キーボードなどのデバイスに周辺機器を接続するためによく使用される短距離無線技術です。IoTデバイスの接続にも広く利用されています。スマートフォンなどの既存デバイスを活用して、低コストで広範囲なIoTネットワークを構築できます。また、ユーザー参加型のアプローチにより、急速なネットワーク拡大が可能になります。さらに、Bluetoothビーコンを活用した新しい位置情報サービスやマイクロペイメントシステムの開発が促進されます。
プロジェクト事例:
Nodle (Polkadot)
IoTデバイスのための分散型ワイヤレスネットワークです。スマートフォンをネットワークノードとして活用し、IoTデバイスの接続性を提供します。

2.3.1.2.4 LoRaWAN (Long Range Wide Area Network)


LoRaWANは長距離、低電力通信向けに設計されており、長いバッテリー寿命と広いカバレッジを必要とするIoTおよびセンサーネットワークに適しています。農業、スマートシティ、環境モニタリングなどの分野で広く活用されています。個人や企業が自由にLoRaWANゲートウェイを設置・運用できるため、従来の通信事業者による展開よりも迅速かつ広範囲なネットワーク構築が可能になります。また、トークンインセンティブにより、ネットワークの持続的な成長と維持が促進されます。さらに、様々なIoTアプリケーションのための低コストで柔軟な通信インフラを提供することができます。
プロジェクト事例:
Helium IoT (Solana)
分散型のIoTネットワークを構築するプロジェクトです。個人や企業がホットスポットを設置してネットワークに貢献し、トークンを獲得できます。
Drop Wireless (IoTeX)
Drop Wirelessは、分散型で透明性の高いネットワークインフラストラクチャを構築するプロジェクトです。複数のブロックチェーン層を活用し、自立的で経済的に実行可能なエコシステムを目指しています。

2.3.2 デジタル資源ネットワーク事例

2.3.2.1 帯域幅

2.3.2.1.1 CDN (Content Delivery Network)


CDN はデジタル資源ネットワークの重要なコンポーネントであり、エンドユーザーへのコンテンツ配信を最適化するのに役立ちます。CDN は、遅延を減らし、Web サービスのパフォーマンスを向上させるために戦略的に配置されたサーバーの分散ネットワークで構成されています。CDN は、Web サイトの読み込み速度、ビデオ ストリーミングの品質、および全体的なユーザー エクスペリエンスを向上させます。従来の中央集権型CDNに比べ、より広範囲で柔軟なネットワークを構築できます。個人や小規模事業者がCDNノードを運営することで、コンテンツ配信の効率性と冗長性が向上し、同時にコストを削減できます。
プロジェクト事例:
Saturn (Filecoin)
Filecoin Saturnは、IPFSとFilecoin上のコンテンツアドレス可能なデータを高速化するWeb3 CDNです。分散型アプリケーションのパフォーマンスを向上させ、ユーザーに高速でセキュアなデータ取得を提供します。暗号通貨インセンティブによって駆動される分散型ノードネットワークを活用し、効率的なコンテンツ配信を実現しています。
Meson (Ethereum)
分散型のコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)プロトコルです。ユーザーが帯域幅を提供してネットワークに貢献し、トークンを獲得できます。
Fleek (Ethereum)
Web3開発者向けの次世代プラットフォームです。分散型ホスティングやストレージソリューションを提供し、Web3アプリケーションの構築と展開を容易にします。

2.3.2.1.2 VPN (Virtual Private Network)


VPNはデジタルネットワーク上で安全な通信を確保する技術で、暗号化された接続でデータを保護しプライバシーを確保します。分散型VPNはこれを進化させ、単一障害点(ある特定箇所に障害が起きると、システム全体が障害となるような箇所)を排除し、より高いプライバシーと匿名性を提供します。ユーザーが自身のコンピューターをVPNノードとして提供することで、世界規模の分散ネットワークが形成されます。これにより、システムの信頼性とセキュリティが向上し、ユーザー主導の安全なグローバルVPNネットワークが実現します。VPN はデジタルネットワーク内で安全かつプライベートな通信を確保するために不可欠です。VPN はインターネット上で暗号化された接続を提供し、潜在的な脅威からデータを保護し、プライバシーを確​​保します。分散型VPNは、単一の障害点を排除し、より高いプライバシーと匿名性を提供します。また、ユーザーが自身のノードを運営することで、信頼性の高いグローバルVPNネットワークを構築できます。
プロジェクト事例:
Orchid (Ethereum)
Orchidは、マルチホップ接続と独自のナノペイメントシステムを特徴とする高度なプライバシー重視の分散型VPNサービスです。Ethereumブロックチェーン上で動作し、OXTトークンを使用して、利用した帯域幅に応じた柔軟な支払いを可能にします。カスタムVPNプロトコルを採用し、主にモバイルデバイスとmacOS、Linuxに対応しています。
Mysterium (Ethereum)
Mysteriumは、使いやすさと幅広い対応プラットフォームを重視した分散型VPNおよびプロキシネットワークです。標準的なVPNプロトコルを使用し、固定料金プランと従量制プランを提供しており、MYSTトークンや法定通貨での支払いに対応しています。Windows、macOS、Linux、iOS、Androidなど、多様なデバイスでサービスを利用できます。

2.3.2.2 コンピューティング(計算資源)


2.3.2.2.1 汎用コンピューティング


汎用コンピューティングリソースは多目的な主力として機能します。幅広いコンピューティングタスクを実行でき、アプリケーションの実行、Web サイトのホスティング、データの管理などのタスクに使用されます。分散型の汎用コンピューティングは、クラウドコンピューティングの代替として、より低コストで柔軟なリソース配分を可能にします。また、遊休コンピューティングリソースの有効活用により、全体的な効率性が向上します。
プロジェクト事例:
Render (Solana)
Renderは、主にグラフィックスやCGのレンダリングに特化した分散型クラウドコンピューティングネットワークです。ユーザーは自身のGPUリソースを提供してレンダリング作業を行い、その対価としてRNDRトークンを獲得できます。映画、アニメーション、3DCG制作などの高度なグラフィックス処理を必要とする産業向けに、効率的で低コストなレンダリングソリューションを提供しています。
Akash (Cosmos)
Akashは、汎用的な分散型クラウドコンピューティングプラットフォームで、幅広い種類のアプリケーションやサービスのホスティングに対応しています。ユーザーは未使用のコンピューティングリソース(CPU、メモリ、ストレージ)を提供し、それらを必要とするユーザーとマッチングする市場を形成します。Dockerコンテナを使用してアプリケーションのデプロイを簡素化し、従来のクラウドプロバイダーよりも低コストで柔軟なサービスを提供しています。

2.3.2.2.1 専用コンピューティング


専用コンピューティングは、特定のタスクや計算に特化したリソースを提供します。これらは、高度な処理能力や特殊なハードウェアが必要な場合に利用されます。分散型の専用コンピューティングにより、高価な専用ハードウェアへのアクセスが民主化されます。また、特定のニーズに応じたカスタマイズされたコンピューティングソリューションの提供が容易になります。
プロジェクト事例:
Livepeer (Ethereum)
分散型のビデオストリーミングネットワークです。ユーザーがコンピューティングリソースを提供してビデオのトランスコーディングを行い、トークンを獲得できます。
分散型ビデオストリーミングネットワークです。ユーザーが計算リソースを提供し、ビデオのトランスコーディング(形式変換・品質最適化・ファイルサイズやバンド幅の効率化)を行うことでトークンを獲得できます。これにより効率的で拡張性の高いストリーミングを実現しています。
The Graph (-)
ブロックチェーンデータのインデックス化と照会のための分散型プロトコルです。開発者がdAppsのためのAPIを容易に構築できるようにします。
ANKR (Ethereum)
Web3インフラストラクチャとクロスチェーンソリューションを提供するプラットフォームです。ノード運用、ステーキング、DeFiサービスなどを提供します。
IoTeX (IoTeX)
IoTデバイスのためのブロックチェーンプラットフォームです。デバイスの認証、データの保護、スマートコントラクトの実行などを可能にします。
w3bstream (IoTeX)
IoTeXが開発した分散型コンピューティングプラットフォームです。リアルワールドデータをWeb3に接続し、機械学習やAIアプリケーションの構築を支援します。

2.3.2.3 ストレージ


2.3.2.3.1 データベース


データベースは、構造化データのリポジトリとして機能します。効率的なデータ管理、取得、処理が可能になるため、コンテンツ管理システム、電子商取引、データ分析など、さまざまなアプリケーションで非常に役立ちます。分散型データベースは、データの耐障害性と可用性を向上させ、中央集権型のシステムに比べてより高いセキュリティを提供します。また、データの所有権と制御をユーザーに還元することが可能になります。
プロジェクト事例:
Aleph (Avalanche, Solana, Ethereum, BSC, Cosmos, Polkadot, Polygon)
Alephは、汎用的な分散型クラウドコンピューティングおよびストレージプラットフォームです。ユーザーはコンピューティングリソースやストレージを提供してネットワークに貢献し、ALEPHトークンを獲得できます。ファイルストレージ、仮想マシン、サーバーレス関数実行など、幅広いクラウドサービスを分散型で提供し、Web3アプリケーションの構築をサポートしています。
Space and Time (IoTeX)
Space and Timeは、ブロックチェーンデータと従来のデータソースを統合する特化型の分散データウェアハウスプラットフォームです。高度なSQL機能とAIを活用した分析ツールを提供し、オンチェーンとオフチェーンのデータを単一のクエリで分析できます。また、Proof of SQLテクノロジーを用いて、データの整合性を保証しながらスマートコントラクトとのシームレスな連携を実現しています。

2.3.2.3.2 File Storage


ファイルストレージは、ドキュメント、画像、マルチメディア ファイルなどの非構造化データまたは半構造化データを保存および取得する手段を提供します。これらは、ネットワーク内でのコンテンツ共有、ドキュメント管理、メディア配信に不可欠です。分散型ファイルストレージは、データの冗長性と耐障害性を高め、中央集権型のクラウドストレージよりも低コストで高いセキュリティを提供します。また、ユーザーが自身のストレージリソースを提供することで、ネットワークの拡大と持続可能性が向上します。
プロジェクト事例:
Filecoin (-)
Filecoinは、分散型のクラウドストレージネットワークで、ユーザーが未使用のストレージスペースを提供することでFILトークンを獲得できます。プロトコルは、暗号経済学的インセンティブを用いてデータの長期保存を保証し、ストレージプロバイダーとクライアントを直接結びつける市場を形成します。Filecoinは主に大規模なデータストレージに焦点を当て、IPFSと連携して効率的なデータ検索と配信を実現しています。
Arweave (-)
Arweaveは、データの永続的な保存に特化した分散型ストレージプラットフォームです。独自の「blockweave」技術を使用し、一度支払いを行えば理論上永久にデータを保存できる仕組みを提供しています。Arweaveは主にウェブコンテンツやアプリケーションの永続的なホスティングに焦点を当て、「Permaweb」と呼ばれる検閲耐性のあるウェブ層を構築しています。

2.3.2.4 AI


2.3.2.4.1 機械学習モデル


自然言語処理、画像認識、予測分析などのタスク向けにトレーニングされた機械学習モデル。分散型機械学習モデルにより、データのプライバシーを保護しつつ、より多様で大規模なデータセットを活用したモデルのトレーニングが可能になります。また、計算リソースの分散化により、モデルトレーニングのコストを削減できます。
プロジェクト事例:
Gensyn (Ethereum)
Gensynは、世界中のコンピューティングリソースを単一のネットワークに接続し、分散型の機械学習コンピューティングプラットフォームを提供します。ユーザーは未使用のコンピューティングパワーをネットワークに提供し、機械学習タスクを実行することでトークンを獲得できます。Gensynは主に機械学習モデルのトレーニングに焦点を当て、分散型かつ許可不要なプロトコルを通じて、誰でもアクセス可能な大規模なコンピューティングリソースを実現しています。
Together (-)
Togetherは、AIモデルの開発、トレーニング、デプロイメントに特化した総合的なプラットフォームを提供します。オープンソースモデルの推論、カスタムモデルのファインチューニング、専用GPUクラスターの提供など、AIの開発サイクル全体をカバーするサービスを展開しています。Togetherは主にAI開発者やリサーチャーをターゲットとし、高性能なインフラストラクチャと柔軟なツールを提供することで、効率的なAI開発を支援しています。

2.3.2.4.2 AIフレームワーク


AI アプリケーションの開発と展開を容易にするソフトウェア ライブラリとフレームワーク。分散型AIフレームワークは、AIの開発と展開をより民主化し、中小企業や個人開発者にも高度なAI機能へのアクセスを提供します。また、コミュニティ主導の開発により、より多様で革新的なAIソリューションの創出が促進されます。
プロジェクト事例:
Fetch AI (Ethereum)
自律的な経済エージェントのためのAIプラットフォームです。機械学習と分散型ネットワークを組み合わせて、スマートな意思決定と取引を可能にします。
Paal AI (Ethereum)
Paal AIは、コミュニティ、グループ、個人向けの高度なAIボットアシスタンスを提供するプラットフォームです。リアルタイムのインターネットデータを活用したAIアシスタンス、暗号通貨研究のためのAIサポート、カスタマイズ可能なデータ/コンテンツ/トピック、ブランドやプロジェクト向けのホワイトラベルソリューションを提供しています。

2.3.2.4.3 GPUマーケットプレイス


AI ワークロードのパフォーマンスを向上させる GPU や TPU などの特殊なハードウェア マーケットプレイス。分散型GPUマーケットプレイスにより、高価なAI専用ハードウェアへのアクセスが民主化され、個人や小規模企業でも高度なAI開発が可能になります。また、遊休GPUリソースの有効活用により、全体的なリソース効率が向上します。
プロジェクト事例:
Exabits (Solana)
Exabitsは、分散型のAIコンピューティングネットワークを構築するプロジェクトです。未使用のGPUリソースを活用し、AIトレーニングや推論タスクを分散化することで、効率的で低コストなAIコンピューティングを実現します。参加者はリソースを提供することでトークンを獲得でき、AIの民主化と計算能力の分散化を目指しています。
GPU.net (独自チェーン)
分散型のGPUコンピューティングネットワークです。ユーザーが未使用のGPUリソースを提供し、AI訓練や科学計算などのタスクを実行してトークンを獲得できます。

Solanaの概要

3.1 Solanaの特徴とDePINとの相性


3.1.1 Solanaの特徴


Solanaチェーンは、高性能で低コストなブロックチェーンとして知られており、以下のような特徴を持っています:
優れた性能と技術の進歩: Solanaは卓越したスループット能力を誇り、ピーク時には毎秒65,000トランザクション(TPS)を超え、通常時には2,500~3,000TPSを処理します。特筆すべきは、Firedancerのアップグレード後、理論上のTPSは100万を超え、日常的なTPSは10万を超える可能性があることです。

低コスト: Ethereumの「Dencun」アップグレード後も、Solanaは依然として低ガス料金のL1ソリューションとしての地位を保っています。これは、DePINプロジェクトなど、頻繁なトランザクションを必要とするアプリケーションにとって大きな利点となっています。
堅牢なトークン標準と繁栄するエコシステム: Solanaは、十分にテストされたDEXと、圧縮NFT(cNFT)、プログラマブルNFT(pNFT)、トークン拡張などの確立された標準を備えたダイナミックなエコシステムを提供しています。これらは、DePINプロジェクトがオンチェーン製品を開発・発売するための基本コンポーネントとなります。
集中する流動性とComposableなエコシステム: Solanaのエコシステムは、L1に流動性が集中し、相互運用性が高いという特徴があります。これにより、DeFiプロジェクトやDePINプロジェクトなど、様々なアプリケーションが効率的に連携できる環境が整っています。
活発な開発者コミュニティ: Solanaは、ハッカソンや様々なインセンティブを通じて活発な開発者コミュニティを育成し、エコシステムの拡大を推進しています。これにより、革新的なプロジェクトと新しいコンセプトが継続的に生み出されています。

3.1.2 DePINとの相性


高スループットと低コスト: DePINプロジェクトは大量のトランザクションを必要とすることが多く、Solanaの高いTPS処理能力と低いガス料金は、これらのプロジェクトの運営コストを大幅に削減します。
スケーラビリティ: DePINネットワークは急速に成長する傾向があり、Solanaの高いスケーラビリティはこの成長に対応できます。
cNFTの活用: SolanaのcNFT(圧縮NFT)は、DePIN/PoPWノードにより費用対効果の高い認証証明書を提供します。これにより、大規模なノードネットワークの管理が容易になります。
DeFiとの統合: SolanaのDeFiエコシステムは、DePINプロジェクトに金融機能を容易に組み込むことを可能にします。これにより、トークン経済やユーザーインセンティブの設計がより柔軟になります。
開発者フレンドリー: 活発な開発者コミュニティと充実した開発ツールにより、新しいDePINプロジェクトの立ち上げと成長が促進されます。

3.2 SolanaにおけるDePINプロジェクト紹介


DePIN HUBを参考に2024年8月時点でアクティブなSolana上のDePINプロジェクトを紹介します。

3.2.1 センサー


3.2.1.1 Wingbits


Wingbitsは、分散型の飛行追跡システムを構築しています。このプロジェクトは、個人が所有するADS-B受信機のネットワークを展開し、航空データ市場に革新をもたらすことを目指しています。参加者は受信機を設置することで、航空機の位置情報を収集し、その貢献に応じてトークンを獲得できます。

3.2.1.2 SRCFUL


SRCFULは、分散型仮想発電所(VPP)を構築するプロジェクトです。太陽光パネルやバッテリーなどの分散型エネルギーリソース(DER)の潜在能力を最大限に引き出すことを目的としています。このシステムにより、エネルギー生産者はより効率的にエネルギーを管理し、余剰電力を市場で取引することが可能になります。

3.2.1.3 Hivemapper


Hivemapperは、Solana上に構築された分散型地図作成プロトコルです。ユーザーは専用のダッシュカムを使用して運転中に道路データを収集し、そのデータを提供することで暗号通貨を獲得できます。このアプローチにより、常に最新の地図データを維持することが可能になります。

3.2.1.4 MapMetrics


MapMetricsは、Web3技術を活用した「drive-to-earn」暗号ナビゲーションアプリです。ユーザーは運転中に暗号通貨とNFTを獲得できるだけでなく、交通情報の更新にも貢献します。このアプリは、従来のナビゲーションアプリに暗号経済的インセンティブを組み込んだ革新的なアプローチを取っています。

3.2.1.5 Onocoy


Onocoyは、コミュニティ主導のGNSS(全地球航法衛星システム)基準局の密なネットワークを提供することを目指しています。このプロジェクトは、高精度な位置情報サービスを広く利用可能にすることで、自動運転車や精密農業などの新技術の発展を支援します。

3.2.1.6 Mindland


Mindlandは、脳波(EEG)データを収集・分析するためのデバイスとプラットフォームを提供しています。ユーザーは日常生活で脳波データを収集し、そのデータを提供することでトークンを獲得できます。このプロジェクトは、脳科学研究や精神衛生の向上に貢献することを目指しています。

3.2.1.7 Power Ledger


Power Ledgerは、再生可能エネルギーの追跡、取引、トレースを行う革新的なプロジェクトを世界中で展開しています。ブロックチェーン技術を活用して、エネルギー生産者と利用者消費者を直接結びつけ、より効率的で透明性の高いエネルギー市場の創出を目指しています。また、再生可能エネルギー証書(REC)の取引プラットフォームも提供しています。

3.2.1.8 Teleport


Teleportは、暗号化アイデンティティとゼロトラストの原則に基づいて、インフラストラクチャへの最小権限アクセスを提供するセキュリティプラットフォームです。このプロジェクトは、従来のVPNやSSHキーに代わる、より安全で柔軟なアクセス管理ソリューションを提供することを目指しています。

3.2.1.9 AquaSave


AquaSaveは、IoTとブロックチェーン技術を活用して世界的な水危機に取り組むエコシステムです。水の使用量を監視するセンサーを展開し、効率的な水の使用を促進します。参加者は水の節約に貢献することでトークンを獲得でき、これにより持続可能な水の使用を奨励しています。

3.2.1.10 Star Power


Star Powerは、空調ユニット、EV充電器、バッテリーなどのエネルギーデバイスを接続する分散型エネルギーネットワークです。このプロジェクトは、エネルギーの需要と供給をリアルタイムで最適化し、エネルギーグリッドの効率性と安定性を向上させることを目指しています。参加者はデバイスをネットワークに接続することで、エネルギー市場に参加し、収益を得ることができます。

3.2.2 ワイヤレスネットワーク


3.2.2.1 XNET


XNETは、資産管理業界向けの包括的なソフトウェアソリューションを提供する企業です。フロント、ミドル、バックオフィス業務をサポートし、アプリケーション、システム運用アウトソーシング(AMO)、業務プロセスアウトソーシング(SO)サービスを提供しています。

3.2.2.2 Roam


Roamは、ブロックチェーン技術を活用して、ユーザーがリアルタイムのネットワークパフォーマンスデータを共有し、報酬を得ることができる革新的なモバイルネットワークプロジェクトです。DePIN/ワイヤレス分野のパイオニア的存在として、Roamはユーザーラベル付きデータ測定を活用し、通信事業者、企業の接続性管理者、技術に精通したユーザーのためにネットワークサービスと顧客体験を向上させる独自の洞察を提供しています。このプロジェクトは、Web3技術を基盤とし、中央集権的なインフラストラクチャを必要とせずに、安全でスケーラブルな無線接続を実現することを目指しています。

3.2.2.3 Helium


Heliumは、分散型のブロックチェーンベースのワイヤレスインフラストラクチャプロジェクトです。個人や組織がトークンインセンティブを通じてワイヤレスネットワークを展開・運営できるようにします。

3.2.3 帯域幅


3.2.3.1 Fleek


Fleekは、新しいオープンウェブ上でウェブサイトやアプリケーションを構築するためのプラットフォームです。Internet Computer、IPFS、Filecoinなどの分散型プロトコルを活用し、パーミッションレス、トラストレス、検閲耐性のあるウェブサービスを提供しています。ホスティング、ストレージ、ゲートウェイなどの機能を通じて、開発者は中央集権的なゲートキーパーから解放された環境で簡単にプロジェクトをデプロイできます。

3.2.3.2 Media


Media Networkは、ウェブサービスのための分散型ハブで、スマートコントラクトを通じてプロバイダーとクライアントを結びつけます。このプラットフォームは、登録やKYC不要で、P2P技術を活用した検閲耐性のあるエコシステムを提供し、MEDIAトークンを介して取引や意思決定を行います。また、Media Serverなどのツールを通じて、分散型のコンテンツ配信を可能にしています。

3.2.3.3 Grass


Grassは、AIモデルを支える基盤インフラストラクチャを提供するプロジェクトです。ユーザーがGrassアプリケーションをインストールすると、未使用のインターネット帯域幅を自動的にAI企業に販売し、それらの企業がインターネットをスクレイピングしてAIモデルを訓練するのに使用します。これにより、ユーザーはAIの成長に直接貢献しながら、知らず知らずのうちに所有していたリソースを活用して収益を得ることができます。

3.2.4 コンピューティング


3.2.4.1 Render


Renderは、主にグラフィックスやCGのレンダリングに特化した分散型クラウドコンピューティングネットワークです。ユーザーは自身のGPUリソースを提供してレンダリング作業を行い、その対価としてRNDRトークンを獲得できます。映画、アニメーション、3DCG制作などの高度なグラフィックス処理を必要とする産業向けに、効率的で低コストなレンダリングソリューションを提供しています。

3.2.4.2 Io.net


Io.netは、機械学習(ML)向けの分散型GPUネットワークです。未使用のGPUリソースを集約し、MLエンジニアに低コストで大規模な計算能力へのアクセスを提供します。分散コンピューティングライブラリを活用し、複数のデバイスにわたるジョブの並列化を可能にします。

3.2.4.3 Nosana


Nosanaは、AI推論ワークロード向けの分散型コンピューティングネットワークです。LLama 2やStable Diffusionなどの訓練済みAIモデルを実行可能にし、分散型の計算リソースを提供します。

3.2.4.4 Flux


Fluxは、分散型クラウドインフラストラクチャを提供する革新的なプロジェクトです。このプラットフォームは、ユーザーが自身のハードウェアリソースを提供することで、従来の中央集権型クラウドサービスに代わる分散型の代替手段を実現しています。Fluxは、ウェブ3.0アプリケーション、dApps、およびその他の分散型サービスのためのスケーラブルで安全なホスティング環境を提供し、ブロックチェーン技術とクラウドコンピューティングを融合させています。

3.2.4.5 Gaimin


Gaiminは、ゲーム開発者向けのベースレイヤーで、NFT、ブロックチェーン機能、ホワイトラベルのゲーミングトークンをゲームやメタバースに組み込むことができます。また、ユーザーの遊休GPUパワーを集約し、最も収益性の高い用途を自動的に特定して、プレイヤーにインセンティブを提供します。

3.2.5 ストレージ


3.2.5.1 GenesysGo


GenesysGoは、Shadow Protocolと呼ばれる分散型インフラストラクチャを提供しています。このプロトコルは、Shadow Network(分散型RPC)、Shadow Drive(分散型データストレージ)、Shadow Cloud(分散型クラウド)の3つの柱で構成されています。ユーザーはShadow Operatorとしてネットワークに参加し、RPCノードを運用することでトークンを獲得できます。

3.2.5.2 Aleph


Aleph.imは、オープンソースのオフチェーンP2Pネットワークで、分散型のキー値ストア、ファイルストレージ、関数実行、仮想マシンプロビジョニングを提供します。Ethereum、Tezos、Solanaなどの主要なブロックチェーンネットワークと相互運用可能な分散型アイデンティティを使用し、ブロックチェーンネットワークとの相互作用を可能にします。

3.2.6 AI


3.2.6.1 UpRock


UpRockは、AIウェブクローリングとデータ合成の民主化を目指す革新的なプラットフォームです。中央集権型AIと分散型物理インフラのバランスを取り、公平でリアルタイムなパーソナライズされたインサイトを提供します。ユーザーは帯域幅とコンピューティングリソースを共有する代わりにUpRockトークンを獲得し、AIインサイトサービス(IaaS)を受け取ることができます。

4.日本企業へのSolana DePIN導入の示唆

4.1 今後のSolana DePINの機会とトレンド予測


高性能インフラの需要増加:DePINプロジェクトは高スループットを要求するため、SolanaのようなL1の需要が高まると予想されます。特に、IoTデバイスの増加や5G技術の普及に伴い、大量のデータ処理が必要となるプロジェクトが増加するでしょう。
エネルギー分野への展開:クリーンエネルギーインフラや仮想発電所など、エネルギー関連のDePINプロジェクトの増加が見込まれます。日本の再生可能エネルギー政策とも合致し、大きな成長機会があると考えられます。
プラットフォーム化:大規模DePINプロジェクトが小規模プロジェクトの開発基盤となる傾向が強まるでしょう。例えば、HeliumやRender Networkのような既存の大規模プロジェクトが、新たなサービスやアプリケーションの開発プラットフォームとなる可能性があります。
他のエコシステムとの融合:
DePIN × ZK:データの真正性証明とプライバシー保護技術の統合
DePIN × AI:分散型機械学習の発展と、AIモデルのトレーニングにDePINリソースを活用
DePIN × ゲーム:現実世界とゲーム体験の融合、位置情報ベースのゲームなど
DePIN × RWA (Real World Assets):物理的資産のトークン化と流動性の向上*RWAは実物資産をデジタル化し、ブロックチェーンで管理します。小口化と流動性向上が特徴です。
規制対応とコンプライアンス: DePINプロジェクトの成長に伴い、各国の規制当局の注目も高まると予想されます。日本においても、金融庁や総務省などによる規制の明確化が進む可能性があり、コンプライアンス対応が重要になるでしょう。

4.2.日本企業のDePIN市場参入機会


少子高齢化と人口減少が進む日本において、DePINは社会インフラの維持管理や地域活性化に大きな可能性を秘めています。例えば、Whole Earth Foundation社が運営するマンホールや電柱の写真撮影をゲーム化したTEKKONは、ゲーム内での活躍に応じてポイントが得られるほか、インフラの状態を可視化することで社会インフラの維持管理に貢献できる仕組みになっています。東京電力パワーグリッド社とDEA社が運営する電柱の写真撮影をゲーム化したピクトレは、ゲーム内での活躍に応じて報酬が得られるほか、電力インフラの異常を早期発見することで社会に貢献できる仕組みになっています。
DePINは近い将来に従来のネットワークに完全に取って代わる可能性は低いものの、既存のインフラを補完し、新たな価値を創出する重要な役割を果たします。具体的には、以下の3つの側面でDePINの活用が考えられます。
ラストワンマイルのカバレッジ拡大:DePINは、従来のプレーヤーにとって財政的に実行困難なエリアでのサービス提供を可能にします。例えば、過疎地域での通信インフラ整備や、都市部の細かな配送網の構築などが考えられます。日本の地方創生の文脈で、これは特に重要な役割を果たす可能性があります。
遊休資源の活用:個人や小規模事業者が保有する未使用のリソースを効果的に活用し、シェアリングエコノミーを促進します。具体的には、個人所有の太陽光パネルによる分散型発電ネットワークや、空き駐車場を活用したEV充電ステーションネットワークなどが挙げられます。
小規模事業者・個人の参画:DePINは、小規模な事業体や個人がインフラ構築に参加できるプラットフォームを提供します。これにより、従来は大企業や政府機関が独占していた分野に、多様なプレーヤーが参入できるようになります。日本の中小企業や個人事業主にとって、新たなビジネスチャンスとなる可能性があります。
これらのDePINの特性を踏まえ、日本の各産業分野での導入可能性を考えてみましょう。
製造業:IoTセンサーを活用した生産ラインの最適化や予防保全システムの構築が考えられます。DePINを活用することで、セキュリティの高いリアルタイムなデータ共有と分析が可能になり、日本の製造業の強みである高品質生産をさらに強化できるでしょう。
物流・運輸:分散型の配送ネットワークの構築が期待されます。Hivemapperのような高精度マッピング技術と組み合わせることで、効率的な配送ルート最適化が可能になります。これは、ドライバー不足や環境負荷削減といった日本の物流業界が抱える課題解決にも貢献できるでしょう。
エネルギー:分散型エネルギー管理システム(Distributed Energy Management SystemDEMS)の構築が注目されています。再生可能エネルギーの余剰電力取引や、電気自動車の充電インフラネットワークの展開などに活用できます。日本のエネルギー政策とも合致するこの取り組みは、エネルギーの地産地消や災害時のレジリエンス向上にも寄与するでしょう。
不動産・建設:スマートビルディングの管理や、分散型の不動産取引プラットフォームの構築が考えられます。Real World Assets(RWA)のトークン化と組み合わせることで、不動産投資の新しい形態を生み出せる可能性があります。これは、日本の不動産市場の流動性向上や、空き家問題の解決にも貢献できるかもしれません。
金融:DePINインフラを活用した新しい金融商品やサービスの開発が期待されます。例えば、IoTデータに基づく保険商品や、分散型アイデンティティを活用したKYC(Know Your Customer)システムなどが考えられます。これらは、日本の金融サービスのデジタル化推進にも寄与するでしょう。
さらに、日本には、DePIN市場で活かせる独自の強みがいくつか存在します。
高品質ハードウェア:日本の優れた製造技術を活かし、高性能かつ信頼性の高いDePINデバイス(センサー、通信機器など)の開発と展開。特に、厳しい品質基準と長期的な信頼性が求められる産業用途において、日本企業の強みを発揮できる可能性があります。
エネルギー管理:日本の先進的なスマートグリッド技術やEV充電インフラの知見を活かし、DePINを活用した次世代エネルギーマネジメントシステムの開発。特に、災害に強い分散型エネルギーシステムの構築において、日本の経験と技術が活きるでしょう。
モビリティ:自動運転技術や高精度地図データの分野でのDePIN活用。日本の自動車メーカーやナビゲーション企業が持つ技術と、DePINの分散型データ収集・共有システムを組み合わせることで、より精緻で最新の交通情報サービスを提供できる可能性があります。
IoT/センサーネットワーク:日本の強みである精密機器技術を活かしたDePINセンサーの開発。特に、環境モニタリングや災害予知・防災システムなど、社会インフラに関わる分野での応用が期待されます。
ロボティクス:日本のロボット技術とDePINを融合させた新しいサービスの創出。例えば、分散型のロボット制御システムや、複数のロボットが協調して作業を行うためのデータ共有プラットフォームなどが考えられます。
アニメ・ゲーム:日本のコンテンツ産業の強みを活かし、DePINを活用した新しい形のエンターテインメントサービスの開発。位置情報ベースのAR/VRゲームや、ファンコミュニティを活性化させるトークンエコノミーの構築などが可能です。
日本企業がSolana DePIN市場に参入する際は、これらの強みを活かしつつ、グローバルな技術トレンドと日本特有のニーズをバランス良く取り入れることが重要です。また、規制対応やセキュリティ確保にも十分注意を払い、持続可能なビジネスモデルを構築することが求められます。DePINは、日本が直面する社会課題の解決と新たな経済成長の両立を可能にする重要な技術となる可能性を秘めています。

参考文献


『State of Solana DePIN 2024』(2024年2月) : https://blog.superteam.fun/p/state-of-solana-depin-2024

『DePIN: An Emerging Narrative』(2024年1月) : https://public.bnbstatic.com/static/files/research/depin-an-emerging-narrative.pdf

『HTX Research:DePIN: Current State and Prospects』 (2024年5月) : https://www.nasdaq.com/press-release/htx-research:depin:-current-state-and-prospects-2024-05-03

『GameFi + DePIN’s New Gameplay is Here! AR Chain Game Yuliverse Will Launch Wearable Ring Moonring』 (2024年7月) : https://www.gate.io/ja/learn/articles/gamefi-depins-new-gameplay-is-here-ar-chain-game-yuliverse-will-launch-wearable-ring-moonring/3363

『FMG Full DePIN report: The Future of DePIN 2024』(2024年6月) : https://cointelegraph.com/press-releases/fmg-full-depin-report-the-future-of-depin-2024

『DePINの概要 物理ネットワークをトークンでブートストラップするWeb3プロジェクト郡』(2023年12月) : https://hashhub-research.com/articles/2023-12-16-depin-overview

『SolanaとDePINエコシステムの最前線 ~HivemapperとHeliumエコシステムのいま~』(2024年3月) : https://hashhub-research.com/articles/2024-03-11-solana-depin-ecosystem

『DePIN Hub』: https://depinhub.io/